伝統工芸から日常使いの食器まで、多くの人に親しまれる「美濃焼」。全国で50%以上のシェアを誇る、岐阜県を代表する陶磁器で、色や形、さまざまな表情を楽しむことができます。1300年以上の長い歴史を誇りますが、その"未来"には厳しい現実がありました。
美濃焼の産地に“陶器の墓場” 捨てられた陶磁器を新たな商品に

岐阜県多治見市内の廃棄物処分場。よく見ると、食器やコップなどが捨てられています。不要になった“陶磁器の墓場”です。
多治見市環境文化部 渡辺俊和さん:
「基本は埋め立て処分というかたちになります。これを薄く敷きならし、土をかぶせて またその上にごみを埋める」
陶磁器は焼却処分できないため、重機で粉々につぶされ積み上がるのみ。

捨てられた陶磁器の山を見つめる一人の男性がいました。美濃焼の食器などを製造する会社の代表・加藤大輝さんです。
小田陶器 加藤大輝社長:
「やむを得ないこととはいえども、寂しいかなと」
実は、廃棄された陶器を、ある方法で再び商品の姿によみがえらせています。
温かみのある独特の色合いが魅力で、"リサイクル"だけでなく温暖化対策にも貢献するという未来を支える食器は、どのようにして生まれるのでしょうか。
輸入頼みの現状を打破 伝統を支える「リサイクル原料」

岐阜県瑞浪市で美濃焼の食器などを製造する小田陶器。加藤社長が見せてくれたのは、不要になった陶磁器を混ぜてできた“リサイクル原料”です。
小田陶器 加藤大輝社長:
「陶磁器の食器を回収して、粉砕して、さらに細かくして原料に混ぜて、リサイクル原料ができます」
小田陶器では、この原料を使って食器をつくっています。

このリサイクル原料ができるまでの工程を知るために、陶磁器用の原料をつくる工場を訪ねてみました。
ヤマカ陶料 加藤誠二副社長:
「これは一般家庭で不要になった食器が当社に送られてきたものです。これを粉砕して原料として使います」
家庭から集められた食器の山を、専門の業者が細かく粉砕。石や土などの天然原料と一緒に混ぜ合わせると、陶磁器の原料が完成します。
リサイクル原料が注目される理由は他にもありました。国産の天然原料が減り、世界各国からの輸入に頼っているため、それを補う原料として期待されているのです。
不要になった陶磁器が“地球に優しい食器”に劇的復活!

こうしてできあがったリサイクル原料は、小田陶器の工場で新たな食器に生まれ変わります。
ろくろを回す仕組みを再現した機械が、わずか3秒ほどで、次々とお皿をかたどっていきます。
ここまでは、普通のお皿をつくる工程とほとんど同じように見えますが、リサイクル原料ならではの苦労もあるようです。
小田陶器 大平浩司工場長:
「粘り気が少ないので、少し押しただけでも割れてしまう」

使われているのは、リサイクル原料が50%入った土。通常よりも粘り気が少なく、作業の途中で割れてしまうこともあるといいます。
小田陶器 大平浩司工場長:
「開発当初はなかなか上手くいかないことも多かったんですけど、ここ何年かでだいぶ形になってきたので、苦労して研究したかいがあったかな」
資源の再利用に加えて、製造工程にも地球に優しい秘密がありました。通常の陶磁器は1300℃で焼くのに対し、リサイクル食器は1150℃と低い温度で焼くため、CO2を約30%削減できるのです。
国内外で広がるサステナブルな美濃焼の輪

こうしてできたのが、不要食器を50%配合した「Re50(り・ごじゅう)」。温かみのある色合いは、リサイクル原料だからこそ出せる色だといいます。
小田陶器 加藤大輝社長:
「先代ががんばってくれたことが、いま注目されるようになって、供給できているっていうことは、非常にいいことだし、よかったと思います」
家庭の食卓で、環境について考えるきっかけにしてほしいという願いも込められたリサイクル食器。実際に手に取った人たちも「すてきですよね、現代風でかわいい」「なんでもそういったことをやってみるのはいいですよね。何かに利用できるんだったら使うっていう」と、好意的な反応を寄せています。
外資系のホテルなどからの注文も増えてきていて、リサイクル食器の存在は国内外問わず広まっています。

小田陶器 加藤大輝社長:
「まだ非常にいろいろなハードルがあるかと思いますが、産地全体でもっと普及していくことになるといいと思います」
美濃焼の伝統も環境も守る。陶磁器の産地をあげた挑戦は、これからも続いていきます。


