8月30日、高山市長選当日。この日行われていたのは「たかやまこども選挙」。有権者が子どもなら、運営側も子どもです。

切手佑樹 選挙管理委員長:
「実際の選挙と同じ日に、本物の機材を使って、実際の候補者に投票する模擬選挙の活動」
リーダーは、県立斐太高校3年生の切手佑樹さん。地元の同級生たちと約3か月準備を続けてきました。
選挙権を持たない子どもたちに、地元の政治について身近に考えてもらうことを目指す「こども選挙」。企画から運営のすべてを子どもたちだけで行うのは、全国でも珍しい取り組みです。

それだけに、運営には慎重さが求められます。注意書きには「候補者については話さない」の文字。
切手佑樹 選挙管理委員長:
「運営メンバーの政治への参加の権利を少し制限してしまうのは申し訳ないが、こども選挙を公平・中立に運営するために、ここを徹底してもらいたい」
政治的公平性を保つために厳格に振る舞う切手さんですが、説明会を終えれば、大好きな地元の高山ラーメンをすするあどけない高校生です。
幼いころから切手さんを知る店主もその活動を温かく見守っています。
ナカヤマ荘 店主:「今の若い子で、高山について考えるのはいいことではないか」
高校3年生で受験勉強を抱える中でも動きたかった切手さん。若い世代が政治に関心を持ち、活気のある高山になってほしいといいます。
切手佑樹 選挙管理委員長:
「高山祭に参加させてもらったり、地域に育ててもらったという意識がある。だからこそ、このこども選挙をするにあたって、地域に恩返ししたいという気持ちが活動をしていく大きな支えになってる」
■“こども選挙”投票所は計5か所

そして迎えた投開票日。“大人の選挙”に立候補したのは現職の田中明さんと、新人の益田大輔さんの2人。「継続」か「刷新」か、今後の高山を占う一騎打ちです。
一方、同じ候補者で行うこども選挙の投票所は、地元の複合商業施設など計5か所。
有権者は高山市内在住の小学4年生から17歳の約6250人。目標投票数はその40%にあたる、計2500票です。

投票用紙には子どもたちの声を新市長に届けるため、メッセージ欄が設けられています。
切手佑樹 選挙管理委員長:
「あっという間の準備期間の3か月だったし、ぜひ子どもたちに来てほしい。どんなことを書いてくれるのかという開票も楽しみですし、書いてる間に高山のことを考えてくれればと思います」

本番の選挙さながら、最初の投票者とともに「零票確認」を行い、投票スタートです。受付から先は、大人の立ち入りは禁止。周囲の意見ではなく、子ども自身に考えてもらうためです。
運営スタッフ:「きょうの夜8時までは誰に投票したか言わないようにお願いします」
こうした注意も徹底します。本物さながらの雰囲気に、子どもたちは…。
中学1年生:「大人への一歩を踏んだ感じで、けっこう良かったと思います」
小学4年生:「ちょっと緊張したけど、次本当に投票するときにこんな感じなんだというのがわかった」
中学2年生:「きょう来てみたら意外に簡単だったので、大人になっても多分行くと思います」
■午後8時 開票作業開始

切手佑樹 選挙管理委員長:
「それでは午後8時になりました。『たかやまこども選挙』開票を開始します」
高校生たちの手で開票が始まりました。順調に開票作業を進めていきますが、すべての投票所の投票用紙の枚数と総投票数を何度確認しても1枚足りません。
切手佑樹 選挙管理委員長:
「数間違えたらこれダメやって、2人の候補がやってるやつで、絶対ちゃんとやるよ。どうするのが最適なんやろう。ちょっとほかにも例、スマホある人調べて」
想定していなかったトラブルに高校生たちは緊急で前例を調べます。
切手佑樹 選挙管理委員長:
「少ないのはそのまま確定させて、持ち帰り票1枚にしてるんやな」
1票を確実にカウントする難しさ。

切手佑樹 選挙管理委員長:
「益田大輔さん508票、田中明さん377票、無効票1、持ち帰り票1、計887票で確定」
こども選挙は新人の益田候補が勝利。
では、大人たちの結果はというと、新人の益田大輔さん 2万1216票、現職の田中明さん2万3155票で田中候補が当選。「たかやまこども選挙」とは逆の結果に。
■ 自分たちの選挙で“落選”市長のもとへ

選挙翌日。子どもたちの姿は、自分たちの選挙では“落選”となった市長のもとに。こども選挙で投票と一緒に集めた地元への思いを、読んでもらおうというのです。
投票用紙のメッセージ欄には、「映画館を作ってほしいです」「新しく何かを建てるというよりバスの本数や街灯とかを増やすなどしてほしい」「いつも笑顔でいてね」と子どもたちらしい意見ばかりです。
子どもたち:「こども選挙で集まった子どもたちの声です」
田中明 市長:「重いね~」
子どもたちの意見を真摯に受け取った市長。

田中明 市長:
「こども選挙の結果は逆だったけど、ただ投票するだけでなく、メッセージを書いてもらったので、それをしっかり読み解いて市政に反映できるものは反映していく」
切手佑樹 選挙管理委員長:
「田中さんが市長になって、活動できる幅も広いと思うので、何か一つでも子どもたちの声を実現してほしいと思います」


