愛知・名古屋アジアパラ大会で、水泳の200メートル個人メドレーと100メートルバタフライで金メダル、100メートル背泳ぎで銀メダルを獲得したパラスイマーの南井瑛翔選手(24)。生まれつき左足の一部がありません。
パラ水泳 南井瑛翔 選手:
「勝ち切れたのがよかったです。いろんな人の支えでとれたメダルだと思います」

若きエースの才能を引き出していたのは、名だたるトップスイマーを指導してきた日本代表トレーナーの小泉圭介さん(55)。
パラ水泳 日本代表トレーナー 小泉圭介さん:
「やっぱり日の丸が揚がって、君が代が流れるのを見ちゃうと、あれ以上のシチュエーションはないですね」

サポートした選手たちはパラリンピックで東京・パリと立て続けに金メダルを量産してきました。
競泳界のレジェンド・北島康介さんを支えたこともある、いわば“金メダル請負人”です。
競泳界のレジェンド 北島康介さん:
「競技能力を上げていくための手段、選択肢を小泉さんがつくってくれた。選手の特徴や痛みはどこから来ているのか、瞬時に解析できる能力がズバ抜けている」

練習中は近寄りがたいほどの緊張感を漂わせる小泉さん。日本代表を支えるが故かと思いきや“型破りな発言”も。
日本代表トレーナー 小泉さん:
「こういうことをいうと、本当によくないことですが…。水泳のトレーナーなんて、やりたいと一回も思ったことなかった」
Q.泳ぐことは…
「全然無理です。全然嫌いです。嫌いといっていい」
小泉さんは大学時代はアメフトに明け暮れ、卒業後に理学療法士の道へ。そして、思いがけず水泳のトレーナーとなってから、今につながる“やりがい”を見つけたといいます。
日本代表トレーナー 小泉さん:
「(パラ水泳に)最初に関わり出した時に、考えていたいろいろな常識があったんですが、入ってからいろいろやると、どんどん覆されていったんです。左右差がある条件で、どうやって戦うのかということを考えなくてはいけないことも多かったので、とても頭を使う」
手足の一部がない選手の泳ぎ方は教科書には載っていません。仮説を立てて証明していくことを繰り返し、結果につなげてきました。

そしていま、特に期待を寄せているのが今回のアジアパラで2大会連続で2種目の金メダルを狙う南井選手。
南井選手:
「障害がある以上、そこに甘えてきたというか。限界を自分で決めてしまっているので、その限界を超えることを目標にしている」

障害を理由にして“自分を守って生きてきた”過去。その限界を超えるため小泉さんからは厳しい指摘が…。
日本代表トレーナー 小泉さん:
「俺がやれると言っているのに、途中で諦めたりする、たまに。勝てている選手はそれなりのストレスをくらっている。子どもの頃に。それを乗り越えて来たから、人間として強い」
痛いところをつかれたのか言葉が出ない南井選手。

南井選手が水泳をはじめたきっかけ。それは、障害を隠さずに生きてほしいという両親の願いでした。
南井選手の父・南井隆徳さん:
「隠してほしくないっていうのが一番にあったので、今の姿、形をもっているのが瑛翔だと周りの人に知ってほしかった。これが俺だという生き方ができているのが一番うれしい」

日本代表トレーナー 小泉さん:「センスはあると思うけどさ」
南井選手のコーチ 竹村幸さん:「センスはありますよ、抜群に」
ズバ抜けた競技センスがある一方、“今の自分を超える”ための課題が。
南井選手:「多分そもそも最近(左足が)下がっていた。気づいていないだけで」
足が下がっていると、水の抵抗を受けてしまいタイムが伸びない原因になります。
日本代表トレーナー 小泉さん:
「足が下がるというのは、本来は(障害のある)左足は短いので、質量が軽いので下がらないはず。短い左足をキックの時の出力に生かせるように、どれだけトレーニングできるか」
1年前から続けている、左足が沈まないようキック力をあげるトレーニング。大会直前まで追い込みました。

そして、いよいよ大舞台へ。20日行われた200メートル個人メドレー決勝。
バタフライで先頭に立った南井選手。背泳ぎ・平泳ぎで追いつかれる展開になりましたが、2位に大差をつけ、金メダルを獲得しました。

そして、21日に行われた100メートルバタフライ決勝。最後までトップを守り抜き、2大会連続、2種目で金メダルです。
見事、アジアパラ2連覇を達成しました。
南井選手:
「緊張しました。タイム的にも今まで出したことがないので、超えられているかな」

この結果を小泉さんは…。
日本代表トレーナー 小泉さん:
「実力通りの力を発揮できるようになってきたところは成長。自国開催で日の丸を揚げることは、われわれの仕事でもあるのでほっとしています。やはりいいものです。ぐっときます」


