車いすに乗ったまま剣で突いて、得点を奪い合うパラフェンシング。目で追えない剣さばきによる熱戦が連日繰り広げられています。
“超至近距離”一瞬で勝負 パラフェンシング妙技に迫る

一瞬で勝敗が決まるパラフェンシング。その速さの理由は、選手同士の距離の「近さ」にあるようです。岐阜のパラフェンシングチームで練習に励む牛島選手に、競技のルールや魅力について教えてもらいました。
Gifu Fencing Base 牛島悠汰選手:
「この下の銀色の台がフレーム。相手と自分を1本の棒でつないでいる、自分たちの車いすを固定している台」
立って行うフェンシングと異なり、後ろに下がって相手との間合いを取ることはできません。腕が短い方の選手の剣先が、相手の選手の肘に届くように、位置を調整して固定。つまり、距離が取れない上に、最初から攻撃が届くという、逃げることが許されない戦いなのです。

実際に車いすに座ってみると、感じるのは“逃げ場のない圧迫感”と“剣先が常に鼻の先にある”ような感覚。この一瞬の油断も許されない緊迫した状態で、選手たちはどう戦うのでしょうか。
Gifu Fencing Base 牛島悠汰選手:
「後ろに下がることを『スウェー』っていうんですけど、自分が攻撃に行けるところと、相手に突かれない位置、絶妙な位置が大事になってくる」

上半身を大きく傾ける「スウェー」という動きを駆使して剣をよけ、相手の隙を見極めて瞬時に反撃しているのです。
10月19日に行われた試合では、わずか2秒で1ポイントを決める場面も。一瞬の見極めが勝敗を分ける、まさに“まばたき厳禁”の世界。
さらに、攻撃した直後には狙われる側になるという、攻守が目まぐるしく入れ替わるのもパラフェンシングの魅力です。
“無駄のない動き”を武器に世界で戦う注目の日本人選手

日本パラフェンシング協会の育成選手でもある牛島選手。アジアパラ競技大会で注目している選手がいるといいます。
それは、エペとフルーレの代表に選出されている櫻井杏理選手。2026年5月に開催された世界選手権で、銀メダルを獲得するほどの実力を持つ選手です。
東京で行われた練習会に参加した際、直接指導してくれたそうです。
Gifu Fencing Base 牛島悠汰選手:
「世界で戦っていくために必要な心構えも答えてくださった。本当に無駄な動きが一切なく、最短距離でアタックに来る」

牛島選手が驚いた“無駄のない動き”。その秘密を、練習終わりの櫻井選手に直接聞いてみました。
パラフェンシング 櫻井杏理選手:
「やっぱりスピードは自分の強み。それを生かすために、あえてゆっくりできる、あえてスピードを落とす、というのも戦術的には絶対必要」
普段はロンドンを拠点に活動している櫻井選手ですが、愛知県にも深い縁があるといいます。
パラフェンシング 櫻井杏理選手:
「昔から知っている“近所のおじちゃん”みたいな。怒られそうですけど(笑)」

櫻井選手が親しみを込めて「近所のおじちゃん」と呼ぶのは、豊田市にある愛知工業大学フェンシング部の小西監督。2人の交流のきっかけは、海外での合宿で練習場所が一緒になったことでした。実は櫻井選手、2024年のパリパラリンピック直前にも、小西監督のもとを訪れて練習したそうです。
愛知工業大学フェンシング部 小西貴之監督:
「ほかの選手以上に思い入れがある。ぜひメダルを目の前で取ってほしいなと思ってます」
そんな櫻井選手のアジアパラ競技大会の目標は…
パラフェンシング 櫻井杏理選手:
「ホームの力を糧に、今できる、今持っているものをすべて出して戦えるようにというのが、この大会の大きな目標」
アジアパラ競技大会の結果は…?

愛知にも応援の輪が広がる中、迎えた試合当日。櫻井選手は女子フルーレカテゴリーBに出場しました。
あえてスピードを落としてタイミングをずらしたところで、得意の素早い攻撃。終始試合をリードし続け、台湾の選手を15対3で打ち破りました。しかし、体調不良により途中棄権。ベスト8止まりとなりました。

その雪辱をはたすように、男子フルーレカテゴリーAに出場した加納慎太郎選手が活躍! 韓国やタイの強豪選手を破り銅メダルに輝きました。今大会、日本パラフェンシングチーム初めてのメダル獲得です。
パラフェンシング 加納慎太郎選手:
「次のロサンゼルスパラリンピックに向けても準備はやっていて、選考の第1試合というところで、すごく大事な試合で優勝したかったんですけど、なかなかうまくいかず、またあした切り替えて頑張りたい」


