複雑なデザインの構造物を作ることができる「3Dプリンター」技術が心臓に疾患をもつ新生児の治療に応用されています。小さな心臓を内側まで正確に作り上げる3Dプリントの再現力に迫ります。
【医療×ものづくり】100人に1人の心臓病赤ちゃんを救う!3Dプリンターによる超精密「心臓模型」

赤ちゃんの100人に1人が持って生まれる疾患があります。先天性心疾患です。この疾患の症状は様々で、中の壁に穴があいている、血管が狭いなど、患者ごとに状態が異なるため、手術は困難を極めます。

そこで役立つのが、この心臓の形をした模型。例えば、心臓につながる大動脈と肺動脈が入れ替わって生まれた状態を再現。医師たちが動脈を入れ替えてつなぎ直す手術の練習をしています。

しかもこの模型、患者1人1人の心臓の形を外から中まで再現した完全オーダーメイド。本物の心臓のように柔らかく、内部のひだや膜まで再現しています。医師の白石さんがある企業に開発を依頼し、実現しました。

国立循環器病研究センター 小児循環器内科 白石公医師:
「まさに来週手術しようとする一人一人の子どもさんの心臓模型を正確に作って、外科の先生が手術で赤ちゃんの胸を開けたら『小児科が言っていたのとずいぶん心臓の形が違った』と。そういったことをなくしてスムーズに手術に進んでもらえると」

これまで300例もの手術の練習に利用され、成功率の向上に貢献。費用は1つ18万円からで、医療施設の全額負担でしたが、2025年、公的医療保険の適用を受けました。
【製造技術】製造の背景に真空注型技術!自動車部品などの試作ノウハウを活用

京都府京都市にある開発会社クロスメディカルを訪ねました。
クロスメディカル 石田寿人取締役:
「左側に、医療機関から提供していただいたCTデータを表示しています」

心臓模型の設計図を、患者のCT画像をもとに作っていました。それを形にするのが3Dプリンター。特殊な樹脂を紫外線で固めると、心臓の形ができます。ただし、現状では外側だけ。

内部の形も再現したいためそれを元に型枠を作り、中に3Dプリンターで作った内部の模型を組み込みます。その型枠に、独自開発の柔らかい樹脂を流し込みます。この装置、中は真空状態なので気泡ができにくく、樹脂が隅々まで行き渡り、複雑な形でも再現できるのです。

この真空注型という特殊な製造法を実現できた背景には、同社の前身となった事業があります。
クロスメディカル 石田取締役:
「当社は元々、工業製品の外装パーツであったり、内部の部品であったり、そういったものを短納期で納める、いわゆる試作品のメーカーです」

クロスメディカルは、家電や自動車の部品を試作するクロスエフェクトから分離した会社。高い精度で再現し、早く作るのが売りで、その技術が心臓模型に生きたのです。
【今後の展望】公的保険適用で広がる活用!医療現場から世界展開へ

日本経済新聞社 京都支社 大倉悠美記者:
「工業製品を手掛けてきた企業ですが、その高い加工技術や精密なモノづくりが医療分野でも評価された点が興味深いと感じました。日本の高いモノづくりの技術が他の分野と協業を重ねることで、さらなる産業の発展につながることが期待できます」

心臓模型の評価が他の臓器モデルなどの販売拡大にもつながり、会社の売上は着実に増えています。

クロスメディカル 石田取締役:
「赤ちゃんを救えるというところがまずベースではあったのですが、営業活動を進める中で、医療現場には多くのニーズが存在していることを実感しました。国内での周知活動を広げたあとは、海外市場へもこの製品やサービスを積極的に展開していきたいと考えています」


