年を追うごとに増す夏の猛暑。エアコンをフル稼働させても部屋が暑いのは、太陽の光によって生じる熱を建物の外壁などが吸収しているからです。この難問に画期的な工法で挑む企業が、佐賀県にあります。
炭鉱向け資材から公共施設・省エネ膜構造への転換

福岡市にある住宅兼デザイン事務所の屋根は、膜1枚という珍しい構造をしています。膜を通過した光が柔らかく広がり、空間全体を照らします。

この膜、太陽の光によって生じる熱を8割反射。その結果、内部に熱がこもりにくくなるといいます。

この建物に膜を設置したのが、佐賀県多久市の山口産業です。2025年7月期の売上高は約53億円。従業員150人を抱える、膜構造建築の業界では中堅・中規模の企業です。

1972年、炭鉱向けの資材を扱う会社として創業。炭鉱用送風管を中心に製造・販売していましたが、炭鉱業の衰退により業態の転換を余儀なくされます。

山口産業 山口篤樹社長:
「当初は簡易的なテント、倉庫でしたが、最近では公共施設に拡大しました。あとは内部の温度上昇を極力抑えたいという要望もあるので、現在注力しています」

膜を2重構造にして断熱材を入れることもできます。こうした工夫で省エネ効果を実現。
サーモグラフィーで実証された高い遮熱・省エネ効果

鋼板で覆われた建物と白い膜で覆われた建物をサーモグラフィーカメラで撮影して比較すると、鋼板の建物は屋根が約65度で室内は35.1度。一方、膜の建物は屋根が約50度、室温は3度低い32.3度にとどまります。

建物にあとから取り付けられるのも、膜構造の利点です。ある仏壇店では、膜構造を用いたリフォームを実施しました。もともとエアコンを2台設置していましたが、リフォーム後は1台で十分だといいます。店のイメージも一新することができました。

山口産業はこうしたオーダーメイドの依頼を受注。これまでの実績は2000棟を超えます。

山口産業 山口社長:
「設計担当者を20名くらい抱えているので、対応が迅速です。他社ではなく当社を選んでくださるお客様が全国に数多くいらっしゃいます」
設計から製造まで自社一貫体制でスピード対応

オーダーメイドの案件に対応するため、自社で一貫して対応できる体制を整えています。3次元で膜構造建築物の形状や図面を作成できる特殊なソフトを使い、顧客の要望や仕様変更にも柔軟かつ迅速に対応。鉄骨の加工も自社です。

一点一点、大きさやデザインが異なる膜の加工にも対応しています。大きな膜を作るときには、特殊な熱溶着機が活躍します。

400度以上に熱した鉄板で表面を溶かしながら接着し、大きくしていきます。施工期間も一般的な建築と比べ、半分から3分の1に短縮されます。

塩害に強く耐久性も高いと評価され、施設内の温度管理が重要な陸上養殖の現場などにも使われ始めました。2034年度に売上高を100億円にする長期目標を掲げています。

山口産業 山口社長:
「新しいものに積極的にチャレンジするのが、自分たちの技術を上げるためには必要です」

日本経済新聞社 佐賀支局 長谷川聖子支局長:
「膜構造の建造物は鋼板製に比べて軽量で、運搬や施工の負担も軽減できます。山口産業では今後さらに、機能性の高い倉庫テントの開発に取り組む計画です」


