AIやロボットの技術を駆使して、農業のカーボンニュートラル=脱炭素に挑んでいる名古屋のスタートアップを取材しました。
テクノロジーで「儲かる有機農業」を目指すスタートアップ

ミニトマトの農業用ハウスを走るロボット。虫が黄色い光に集まる習性を利用して、一網打尽に。ハウスの中を巡回し、人の代わりに害虫を駆除します。農場を運営するのは、名古屋のスタートアップ「トクイテン」。目指すのは、化石燃料に頼らない農業の効率化。儲かる有機農業です。

トクイテン 豊吉隆一郎社長:
「現在は、かなり化石燃料に頼っている。肥料も化石燃料がないとできない。暖房も化石燃料がないとできないというので、かなりの部分を化石燃料に頼っている。化石燃料を減らしていこうとする中で、そのうちの手段の一つが有機農業」
農業が抱える環境課題と、有機農業普及への壁

世界中で排出される温室効果ガスのおよそ5分の1は、農業に起因していると言われています。そこで政府は、日本の農業の25%を化石燃料に頼らない有機農業に切り替え、2030年までに175万トンの温室効果ガス削減を目指しています。

特に肥料の場合、二酸化炭素だけでなく、二酸化炭素の約300倍の温室効果を持つ亜酸化窒素の排出削減が課題。トクイテンでは、より環境への負荷が小さい有機肥料の開発を進めています。

トクイテン社員:
「開発中の肥料に使っているのがバチルス菌と酵母菌、あと乳酸菌を使っています」

バチルス菌が土壌の有機物を分解し、酵母菌は土をほぐしてふかふかに、そして乳酸菌は土の病気を防ぎます。これらの菌を使ってミニトマトを育てる有機肥料を作ります。ただ、自然の有機物と菌を使った土づくりには欠点もあります。
トクイテン社員:
「化学肥料だと植物が栄養を吸いやすい形になっているんです。しかし有機物だと土壌を分解して、アンモニア態窒素とか硝酸態窒素にならないと植物は吸えない」

有機農業は、土壌の水分量調整や日照量の管理、さらには害虫の駆除や草とりなど、時間と手間がかかります。このため大量生産が難しく、普及の足かせになっています。25%を目指している有機農業への切り替えについて聞いてみました。

トクイテン 豊吉社長:
「現状は0.8%から1%ぐらいという風に言われていまして、有機農業の栽培方法が確立されておらず、栽培が安定しない」
AIとセンサーで栽培環境を統合管理、完全自動化へ

有機農業の普及に必要なのは、生産効率の改善。トクイテンは技術の力でその難問に挑みます。
トクイテン 豊吉社長:
「土にセンサーを埋めています。電気的な特性を測っていて、土がどれくらい湿っているか分かる。ハウス内で温度や湿度を測っています」

ハウスのいたるところにセンサーを設置。

トクイテン 豊吉社長:
「温度、湿度、CO2濃度、日射量などを統合して、今何すべきかをプログラムして、それに合わせて動く」

集まったデータはAIで一括管理しています。菌が活動しやすいのは25度から30度の間と言われていますが、日中、日照量が増えてハウス内の温度が上がりすぎると、自動で日差しをカット。AIによる栽培環境の管理のほか、人の手のかかる害虫駆除や収穫作業にはロボットを駆使。有機農業の完全自動化に成功しました。

トクイテン 豊吉社長:
「利益を出しながら、環境・経済的にも続けていける農業。それを作って全国に広げていきたいなという風に思っています」
「エリアオーナー制度」で企業参入を促し、さらなる大規模化へ

日本経済新聞社 名古屋支社 小山隆司デスク:
「トクイテンは自社の農場の一部を企業に貸し出す、エリアオーナー制度という取り組みも始めました。自社で開発した生産性の高い有機農業の仕組みを企業に体験してもらい、参入を促すことで、有機農業の普及・拡大に繋げたい考えです」
トクイテン、2027年3月までに知多市におよそ1ヘクタール規模の新たな農場を整備する予定だということです。そこでは自社開発の収穫ロボットを本格導入して、有機農業の完全無人化と大規模経営の仕組みを確立したい考えだということです。


