高齢化などにより茶畑が20年間で4割減った静岡県。そんな中、茶畑が持つ環境価値に着目し新しいビジネスモデルを立ち上げたスタートアップを取材しました。
静岡の茶業が直面する危機

お茶どころとして知られる静岡県ですが、高齢化などによりこの20年間で栽培面積は4割以上減少しています。2024年、2025年の年間生産量(荒茶)は鹿児島県にトップを奪われてしまいました。特に山間部は機械化が難しいため、耕作放棄地が増加の一途をたどっています。

そこで立ち上がったのが、地元で300年続くお茶農家で生まれ育った「Blue Farm(ブルーファーム)」の青木大輔社長です。大手通信建設会社を経て起業した青木社長は、企業に山間部にある茶畑のオーナーになってもらい、そこで生産された飲料を1本約140円で定期的に届けるという新たなサービスを作り上げました。
契約している東京都内の大手総合食品卸会社では、2025年から来客時などにこの飲料を利用し、年間約3万本になる見込みです。
三菱食品・岩野真さん:
「単に飲料として比較した場合コストは割高ですが、商談の場で直に当社のサステナビリティの考え方や姿勢を伝えられることは、コストを上回る価値があると考えています」

サービスのポイントは、飲料そのものだけを売るのではない点にあります。青木社長は「茶畑には脱炭素や生物多様性の保全の効果があります。いまそういったサステナビリティの価値が使われずに眠っている。そこを我々がサービス化している」と語ります。
具体的な取り組みとして、センサーで茶畑の日照度や土壌の水分量、pH値などを計測し、そこから温室効果ガスの削減量などを算出して契約企業にレポートを提供しています。企業はこの数値を使って環境保全の効果をアピールできるのです。
ブルーファーム 青木大輔社長:
「(企業は)データを使って、サステナブルは取り組みをしていることを発信したい。ですので、我々は科学的に企業が発信できるデータを提供しています」
さらに有機栽培にもこだわっています。化学肥料を使わず温室効果ガスの発生を抑えるのです。茶畑の温室効果ガスの削減効果は森林の約3分の2まで向上しました。生物多様性の保全にもつながっています。

2025年に開始したこのサービスは現在約50社が契約。その中には、日立ソリューションズや名古屋鉄道など大企業も名を連ねます。この環境への貢献によって、企業側には資金調達や公共工事の入札などでメリットもあります。
日本経済新聞社静岡支局 木下美雅記者:
「近年、企業の持続的な成長に向けてESGへの対応が重視されています。茶畑を単なる生産現場ではなく、環境価値を生み出す基盤として捉え直したことは、前職でIR(投資家向け広報)を経験した青木社長ならではの視点だと思います。このビジネスモデルは他の一次産業にも応用できそうです」

現在の生産面積は10ヘクタール。耕作放棄地を再生しながら拡大しています。さらに、海外からの需要が高まっている抹茶の生産にも乗り出し、2029年までに60億円以上の売上を目指す方針です。
ブルーファーム 青木大輔社長:
「僕たちが日本の茶業を盛り上げていく。少なくとも5年以内には日本でいちばん耕作地が多い企業になっていかなければいけないと思っています」


